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シリウスの小説執筆方法論
第4章 『作文』と『小説』の違いとは?
特にエンターテイメント小説においては『物語がある』かないか。

『物語がある』とは、主人公のする行為に、主人公にとってまさに劇的な意味を持たせることです。
あくまで主人公にとってです。
読む人にとってもそれが劇的であれば、申し分ないですが、必ずしも必要条件ではありません。

テレビ番組の『はじめてのおつかい』を例えにすれば、わかりやすいでしょう。
大人にとっては何でもないことでも、小さな子どもにとっては一大イベントなのです。
その子どもの大変さを大人が観て面白がるのです。
あくまで大変さは、主人公の子どもが基準です。

その個人的な行為に劇的な意味を持たせ、その行為の結果を見せるまでの一連の話が小説です。

具体的な例を挙げてみましょう。
映画『セブン』をご覧になった方はおいででしょうか。
あのラストシーン、ブラット・ピットが拳銃を持って、引き金を引くか引かないかの場面。
アメリカ映画で、人が拳銃で人を撃つことは珍しくはありません。
でも、このブラピが拳銃を握りしめるシーンは観ている者の感情を激しく揺さぶります。
このシーンがなぜ、見る者の感情を揺さぶるかと言えば、ここまでの「経緯」があるからです。

奥さんのこと、退職間際の同僚との関係、なぜ犯人はこんなことをしたのか? ブラピは犯人を撃つのか? 撃たないのか? 撃ったらどうなるのか? 撃たないとどうなるのか? 

観る者にいろんな思いが駆け巡ります。
その行為をさせることまさに劇的な理由と経緯を作るのが「小説」です。
それ以外のことは書いてはいけないのです。

第二章で書いた「子どもに教えるための『作文』の書き方」で、例として書いた作文。
あの作文も、例えば「100メートル走で1位になる」ことに、劇的な意味を持たせれば立派な小説になります。

小学生が運動会の駆けっこで1位になることの劇的な理由。
それが、あるかないか、が『作文』と『小説』の違いです。
しかし、その劇的な理由を『説明』しただけでは、小説になりません。
その意味に説得力を持たせ、そして主人公が1位になったときには、読む者の感情を揺さぶらなければならないのです。
そして、それが『面白い』小説と『面白くない』小説の違いになるのです。



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