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タンバリンでできたオーロラ
第18章 ダッテリーノ

いつものマダムだ。
俺がこんな有り様だから、怖がってなかなか客が寄り付かない店だが、それでも固定客がいるおかげでなんとかもっている。
店というのは親父が残した輸入食材店だ。
都内の片隅でこうしてひっそりと営業を続けてきた。
扱っているものは割と単価の高い高級品だ。
たとえば、さっき俺が並べていた缶詰は、ダッテリーノという元はシチリアが産地の最高級トマトだ。
そういうのを買う女たちがいる。
男もいるが、稀だ。
そして、そういう女たちは、他ではめったに手に入らない贅沢な食材のためなら、店長が多少苦み走った強面の、ショーン・コネリー似の親父でも構わないとみえる。
それをいいことに、俺は日々ますます無愛想に輪をかけているのだ。

