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タンバリンでできたオーロラ
第18章 ダッテリーノ

 彼女が何を求めているのか。
 俺にはわかっていた。

 それはモイモイの葉などではない。

 そして俺は求める女には応える事にしている。

 夕方、店舗のシャッターを降ろした俺は、レジを締めもせず、取り出した伝票用紙に書いてあった番号へと電話をかけた。

 女たちは来る。

 強面の中年男の俺と、物好きな高級食材しかないこの店に。

 何故やって来るのか。
 それはわかりきった事だ。

 俺は、そうだな……都合のいい男なんだろう。
 彼女たちだって、俺にとっては都合のいい女だ。

 俺はダッテリーノだ。
 ちょっと手を出すなら、黒いラベルがいい。
 そんな女のための、甘みの強いトマト缶だ。

 だから、いちいち説明も要らない。

 電話が応答した。
 相手に喋る間を与えず、俺は低い声で一言だけ言う。

「15分後に行く。俺の勘違いなら、扉は閉めておいてくれ」
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