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タンバリンでできたオーロラ
第25章 愛女神28
インドと中国で戦争が起きた。
最初は誰もがそう思った。
だってテレビがそう言ってたんだもん。
だが、ヒマラヤ沿いの国境に集結した人民解放軍が竜巻に巻き込まれでもしたかのように、木っ端微塵になって青空に吸い込まれる中継の映像を見て、俺は我が目を疑った。
これ、戦争ってレベルじゃねぇぞ。
そこに映っていたのは巨大な女神だった。
全身真っ青。長い髪を振り乱し、首に下げるのは生首をつなげて作った首輪。何本あるんだかわからないほどニョッキニョキに生えた腕にはそれぞれごん太の剣が握られて――
カーリーだ。
破戒と殺戮の女神。
夫であるシヴァ神を踏んずけた姿で描かれる、女神の中でも最凶のアレ。
嫁にしたくない女神ナンバーワン。
インド人は何だってこんな神様考えたんだって、民族的正気を疑う神様だ。
そのカーリーが、剣を一振りする度に戦車がふっ飛び、一歩進めば逃げ惑う陸軍兵士がぐしゃぐしゃと束で潰され、手足が千切れ飛ぶ。