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ネムリヒメ.
第8章  雨.








…………1時間前…………










「ふ…んんっ…ぁ…」



屋敷の門の前に横付けされた車


先ほど突然振り出した雨が、車の窓ガラスを叩いている


無音のその車内にはチュッとなるリップ音と、アタシの鼻にかかった甘ったるい声が響いていた


車のエンジンをかけたまま、シート越しにアタシに唇を重ねているのは…彼


……渚くん


身につけているのは、さっき彼に買ってもらったばかりの品の良いフレアのワンピースだ


アタシは予定どおりあれから彼と買い物に出かけていた

イタリアから送った荷物は必要最低限なものだけ

なので今日は足りない物を買う…

買う…

買うーっ!!


洋服に靴にバック、小物に雑貨…


きのうあれだけ騒いだシャンプーは葵くんにお願いするとして…


忘れてはならないのがボディーソープ!!

これがないといつまでたっても自分の部屋のお風呂に入れない


渚くんに「買わなくていいだろ…オレと同じ匂いでいれば!?」とサラッと言われたけれど、その言葉の意味を聞き返すまでもなく理解したアタシによって即、却下になる



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