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ネムリヒメ.
第8章 雨.
先入観で人を見たくないのに…
植え付けられた恐怖心が苦手意識へとかわってしまう…
「…千隼、雅にはムリに関わろうとしなくていい…」
「ぇ…」
壁に寄りかかっていた渚くんが表情をこわばらせるアタシを見て呟く
「…ほっとけ」
「ん、でも雅になにか言われたりしたらすぐ言ってね」
「あ、うん」
さらに、怒気を含んだような硬い声を吐き出す渚くんに、葵くんが言葉を重ねた
「それにゴメンね…こんなに傷だらけにしたくなかった」
青い瞳を切なげに揺らしながらアタシを抱き締める葵くん
きっと葵くんの"ゴメンね"の意味にはアタシに傘を渡したコトの後悔も含まれているんだよね…
それはきっと渚くんも一緒だ
ダメだな、アタシ完璧にメンタルも涙腺も弱ってるな…
言葉を返す代わりに涙が出てくる
「葵っ、それ以上泣かすんじゃねーよ」
「ぇ、わっ、ちーちゃん」
すかさず、押し黙るアタシの様子に涙腺崩壊を察知した渚くんに突っ込まれ、溢れる涙に焦る葵くん
「…ありがと」
アタシはそんなふたりに涙声でそう一言だけ伝えて、葵くんの胸で涙を拭った