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ネムリヒメ.
第18章  不機嫌な Navy Blue.




彼の腕にきつく抱かれ、頭のなかが真っ白なまましばらく時間が過ぎた気がした


「…チッ……めんどくせ」


へ…

ボソッと不機嫌に呟くそんな声とともに、彼の腕が急に解かれる


「…………!!」


その瞬間に、全身の力が抜けてグラッと揺らぐ視界

アタシはその場にヘナヘナと崩れ落ちていた


「おい…」

「…っ!!」


すると、さっきとはまるで別人…

そう、アタシの知っている雅くんの不機嫌な声が上から降ってくる


「目立つから、立てよ」

「っ…!」


いやいやいや、立ちたいけど…

その…っ………


「ったく、立てねぇのかよ…」


彼の足元に崩れ落ちたアタシに槍のように降ってくるトゲのある言葉

それはまるで、あの雨の日のようで…

重なる状況に余計に力が入らず、ただ心臓だけが相変わらずバクバクと音を立てていた


「っ……」


すると、視界に膝を折ってしゃがみこんだ彼の顔が映り込む

へ…!?


「…っ…じゃねぇ、な…」

「………!!」

「色々、わりぃ…」


え……

驚くアタシと目があうと、気まずそうに雅くんは視線を反らせる

そして目の前に彼の大きな手が差し出された


「汚れる…ゆっくりでいい、立て」

「あ……うん」


彼の手をとると、そっと引き上げられる

そして、軽くドレスの裾を払うと視線を外したままの彼が口を開いた


「急に、悪かった…」

「う、うん……」

「つーか、今の忘れろ」


………!?



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