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ネムリヒメ.
第18章  不機嫌な Navy Blue.



…勘違い


ホントに!?


不機嫌そうにアタシを見つめる彼の瞳にキシリと胸が痛む


"勘違いしてんじゃねぇぞ"


彼はそう言ったけれど…

それでも…

どうしてもアタシには

そうは思えなくて…


だって、視線を手元に落とせば

ピンクレモネードに浮かべられたシロップ漬けの真っ赤なさくらんぼ


本来あるはずのないそれは…


「つーか、オレに言うな。渚さんに言え」

「………あ、はい」


そう、あの時

さくらんぼごときでショボくれたアタシに…


………カラン!


「………!?」


そんな涼しげな音に視線を落とせば、アタシの飲んでいたピンクレモネードの氷が揺れて


あ……

一度グラスに沈んだそれが顔を見せ、目を見開いた


淡いピンクに浮べられた鮮やかな赤


「へ……」


驚いて間抜けな声をあげ隣を見れば、彼と視線がぶつかった


「…うるせぇから……………やる…」

「……………!!」



物凄く仕方なさそうな感じだったけれど、それは彼が自分のグラスからアタシのグラスに浮かべてくれたもので…


それも…勘違い!?


そんなコトを思ったら、なんだか胸がモヤモヤしてくる

けれど、アタシからわざと視線を外すように背中を向けてしまった彼に、これ以上に言葉を返すことができなかった


「…へんなオンナ」


ただ、ポツリと…

冷たい風に運ばれた石鹸の香りに、背を向けたまま呟かれた彼の声が流されて消えていく

ただアタシは静かに、グラスに浮かんださくらんぼと彼の背中を見つめていた



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