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ネムリヒメ.
第24章 Get back.
そんなやり取りもつい数分前のこと
不快感を覚える度に過る望の憎ったらしい笑顔
過りすぎて拒絶反応で吐き気がする
野郎…マジで渚さんの弟とは思えねぇ
そんな望と言えば、姫♡姫♡とルンルンな遠足気分でここまで着いてきておいて、散々人様を笑った挙げ句…
「…えー、オレがぁ!?ムリ、ヤダ、破産するって、手に負えないよ。
……うーん、仕方ないなぁ。ミルクティ、タピオカ入りで勘弁してあげる。ブラックタピオカね。それにピッチャーだよ、グラスじゃなくてピッチャー…」
掛かってきた電話に文句らしき言葉とミルクティーへのこだわりと愛を語り、再び水溜まりの上の雅をこれでもかと笑った後に、
よっしゃ、ミルクティー!!と謎の気合いを入れどこかに姿を消していってしまった
まあ、雅としては面倒から解放され願ったり叶ったりだったのだが…
そんなことよりも、雅が廊下に水溜まりを作っているのは客室層最上階のスイートルームの前だ
望の言う通り、千隼が自分たちのもとを飛び出した後に郁と接触していたら…
「っ………」
あんなオトコと一緒だなんて、ヤツをよく知る故に考えたくもない
しかし…
あの時、自分が泣かせなかったら…
あの時、あの手を掴んでたら…
辛うじてずぶ濡れを免れたジャケットの内側に手を突っ込んでルームキーを弄ると、千隼の泣き顔が目に浮かぶ
「………」
郁はここにいる
どんな状況にせよ、間違えなく彼女もここにいる
なぜか雅にはそんな確信があった