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ネムリヒメ.
第25章  Black Emperor.




もうすぐエレベーターが着くってときに…


焦りのあまり発信元をろくに確認せずコールを繋ぐ聖

すると、


『…鍵っ!!』

「ッ…!?」


電話を耳許に当てがう間もなく、そんな声が漏れ聞こえてくる

この声って…


「…雅!?」


意外だったがよく見知った声に、到着したエレベーターを聖は一旦見送った

短い言葉からただならぬ焦りの色が読み取れる

聖は身を潜めるように人気のない通路の壁によりかかると、その続きの言葉を待つ


すると、


『聖、鍵探せ』

「は…!?」


鍵って…


「郁くんの車のキーならオレ持ってるけど、水没させたから使えるかはビミョ…」

『っ、違ぇよ。つーか、お前どこにいんだよ。部屋に向かってんなら来んな、そのまま望を探せ』

「…!?」


…来るな!?

…望!?


ダメだ、話が見えない…


「っていうか、お前こそどこ!?落ち着いてくんないと、話が見えない。それよりもちーちゃんは?ちーちゃん!!」


電話の向こうでテンパって取り乱す雅

そんな雅に煽られオレまでまんまと取り乱してしまう


とにかくヤバいって空気だけは物凄く伝わってきて、お互い焦ってたら悪循環なのはわかってるのに

ちーちゃんは?

郁くんは?

誰かの声を聞いたら余裕なんてどこにいったって話で、さっきまではあんなに冷静だったのに泣きそうになった

…っていうか、ヤバい…貧血で目眩がする





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