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ネムリヒメ.
第27章 ***






「ッ…郁くんなら…!!」

「きゃッ…──!!」


すると…


「…ちゃんと隣の部屋にいるから!!ッ…」


その力に逆らい捩じ伏せる勢いで、葵くんがその場にアタシを組伏せる


そして、


「ねぇ……頼むから、オレにあんまり乱暴なコトさせないでよ…」


…頭上から彼の怒ってる声がした


実際、葵くんに直接怒られたこともなければ、怒鳴られたこともないけれど…

むしろ静かで、どこか切ないその声は明らかにそんな色を帯びている


「頼むから…さ、ッ…」


取り乱して、強引に飛び出そうとしたアタシをオトコの人の力で強引に押し倒した葵くん

普段の彼なら絶対にこんなことはしないのに…

咄嗟にそんなことが脳裏を過った


…だけど、それは当然だった


「…ッ──」


そんな声や態度とはまったくの裏腹の…

見下ろした泣きそうな瞳の奥にある懇願するように向けられるその感情と、

そこに彼が重ねて映していたビジョンに気づいたとき

アタシはハッとする


「…もう嫌なんだ。離したくない」


彼が見ているもうひとりのアタシの存在に…


「手を離したら、また……怖いんだ…」


それは、こんな風に彼らの手を振り払って飛び出した


「もう、失くすのが…」


昨夜のアタシで…


「…怖いんだよ」


「ッ…──」


俯いて金色の髪に隠されてしまった瞳と、掠れた声にぎゅっと大きな手のひらに力を込められて、喉の奥が締め付けられるように痛くなる





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