この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
―大丈夫ですよ、卵巣が両方共に健康な状態で残っているのであれば、見込みは十分あります。一緒に元気な赤ちゃんが授かるように頑張りましょう、お母さん。
院長はまだ妊娠もしていない紗英子に対して、お母さんと呼びかけた。三十五年間の人生で、〝お母さん〟と呼ばれたのは初めてだった。電話を切ってから、紗英子は一人、ひっそりと涙を流した。
確認したところによれば、確かにかかる費用は莫大なものだ。紗英子の貯金だけでは当然足りず、実家の両親にも頭を下げて頼まねばならないだろう。
紗英子一人の我が儘なのだから、直輝や彼の実家は当てにできない。
更に、紗英子にはまずしなければならないことがあった。
院長はまだ妊娠もしていない紗英子に対して、お母さんと呼びかけた。三十五年間の人生で、〝お母さん〟と呼ばれたのは初めてだった。電話を切ってから、紗英子は一人、ひっそりと涙を流した。
確認したところによれば、確かにかかる費用は莫大なものだ。紗英子の貯金だけでは当然足りず、実家の両親にも頭を下げて頼まねばならないだろう。
紗英子一人の我が儘なのだから、直輝や彼の実家は当てにできない。
更に、紗英子にはまずしなければならないことがあった。