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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 だが、有喜菜ももう三十六歳、これから再婚する気は毛頭ない。結婚も男も、もう最初の結婚でほとほと嫌気が差した。仮に、これから好きな男ができて共に暮らすようになったとしても、籍を入れる気は毛頭ないのだ。一人の男に自分の人生を縛られるなんて、もう懲り懲り。
 もちろん、この男とならば人生をやり直しても良いと心から思えるほどの出逢いがあれば、また結婚する気にもなるだろうが。
 ときめきも愛情もけして不変ではない。そのことを身をもって知る有喜菜は、たとえ心から愛する男と出逢ったとしても、再び結婚という枠に入るだけの勇気を持てるか自信はなかった。
 有喜菜が望むのは後腐れのない、大人の自由な関係だ。ゆえに、基本的には生涯、独身を貫く覚悟でいる。つまり、今、流行の言葉でいえば〝おひとりさま〟の老後を迎えることになる。であれば、蓄えは少しでも多い方が良いに違いない。
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