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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
「これだけは言っておきたいんだけど」
有喜菜が突如として居住まいを正した。
「私のお腹にいる子どもは、あなたの子どもであることは間違いないわ。でもね。この子が十月十日、私のお腹にいる間は、私が母親でもあるのよ。言わば、お腹を借してあげて育てる、育ての母というわけ。だから、この子が誰の子どもだと思おうと、その間は私の自由のはずじゃないかしら。要するに、私の役目は十ヶ月後に、元気な赤ん坊をあなたに渡すことでしょう? それさえ守れば、あなたに私の私生活についてあれこれと口出しする権利は一切ないの、良い?」
有喜菜はきっぱりと断じ、長い両脚を優雅に交差させ、余裕の表情で通りかかった若いウエイトレスに食後のコーヒーを頼んだ。
「さっきは私も言い過ぎたかもしれない、それは謝るわ。でも、あなたも妙な勘違いはしないで欲しいの。幾らあなたの子どもをこの身体の中で育てる代理母の立場になろうと、お互いに守るべき礼儀っていうものはあるでしょ」
いつも溌剌とした話し方をする彼女には似合わないような沈んだ、それでいて諦めてないという意思を感じさせる口調である。
そう言って微笑む彼女を見ていると、何故だか胸がツキリと痛んだ。
有喜菜が突如として居住まいを正した。
「私のお腹にいる子どもは、あなたの子どもであることは間違いないわ。でもね。この子が十月十日、私のお腹にいる間は、私が母親でもあるのよ。言わば、お腹を借してあげて育てる、育ての母というわけ。だから、この子が誰の子どもだと思おうと、その間は私の自由のはずじゃないかしら。要するに、私の役目は十ヶ月後に、元気な赤ん坊をあなたに渡すことでしょう? それさえ守れば、あなたに私の私生活についてあれこれと口出しする権利は一切ないの、良い?」
有喜菜はきっぱりと断じ、長い両脚を優雅に交差させ、余裕の表情で通りかかった若いウエイトレスに食後のコーヒーを頼んだ。
「さっきは私も言い過ぎたかもしれない、それは謝るわ。でも、あなたも妙な勘違いはしないで欲しいの。幾らあなたの子どもをこの身体の中で育てる代理母の立場になろうと、お互いに守るべき礼儀っていうものはあるでしょ」
いつも溌剌とした話し方をする彼女には似合わないような沈んだ、それでいて諦めてないという意思を感じさせる口調である。
そう言って微笑む彼女を見ていると、何故だか胸がツキリと痛んだ。