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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第9章 RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
 だが、この子は私の子どもではない。やはり、紗英子にちゃんと返すべきなのだ。
 と、ジャンパースカートの上から、赤ん坊が動いているのがよく判った。近頃ではとみに胎動が烈しくなり、時には痛みを感じるほど腹壁を強く蹴ることもある。
 もしかしたら、胎児は男の子なのかもしれない。
「男かな、女かな」
 ふと傍らを歩く直輝が呟き、紗英子の膨らんだ腹に手を当ててきた。妊娠九ヶ月めに入ったときから、しばらく二人はホテルに行くのを止めようと話し合っていた。出産が終わるまでは、こうして時折逢っても、食事したりショッピングしたりと、ごく普通のデートを愉しもうということになっている。
「性別は訊かないことにしているのよ」
 有喜菜が微笑むのに、直輝は頷いた。
「その方が良いね。生まれるまでの愉しみがあって良い」
「生まれてくる赤ちゃんの名前は何てつけるの?」
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