この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
有喜菜も有喜菜だが、夫も夫だ。今まで一度もそんな話をしてくれたことはなかった。しかも、そのことを有喜菜から聞かされて知ったというのがいちばん嫌だった。
もっとも、あの頃はまだ自分と直輝は付き合っていたわけではなかった。あくまでも、有喜菜を通じて友人として紹介されただけの関係にすぎず、自他共に認める彼氏と彼女の関係になったのは二年になってからのことだった。有喜菜と直輝が別のクラスとなり、紗英子と直輝が今度は同じクラスになった。
スポーツマンでイケメンの直輝はあの頃から注目度大で、女の子にすごぶるモテた。それまで何かといえばくっついていた有喜菜と直輝がやっと離れてくれたので、紗英子はここぞとばかりに猛アタックしたのだ。
自分のどこに、そこまでの無謀さと勇気があったのかと我ながら感心するほど積極的になれた。平凡な自分は直輝とは釣り合わない。元から実ることなどない恋だと諦めていたのに、どういうわけか、直輝は紗英子の告白を受け容れて二人は付き合い始めた。有喜菜にはもちろん、事後報告で済ませた。
「それじゃあ、折角教えて貰ったんだし、時計にするわ。ありがとう。私の知らないことを教えてくれて」
最後には可能な限りの皮肉を込めておいた。
「いいえ、どういたしまして」
曖昧な笑顔を浮かべる有喜菜の顔が一瞬、複雑そうに歪んだことに、迂闊にも紗英子は気づかなかった。
もっとも、あの頃はまだ自分と直輝は付き合っていたわけではなかった。あくまでも、有喜菜を通じて友人として紹介されただけの関係にすぎず、自他共に認める彼氏と彼女の関係になったのは二年になってからのことだった。有喜菜と直輝が別のクラスとなり、紗英子と直輝が今度は同じクラスになった。
スポーツマンでイケメンの直輝はあの頃から注目度大で、女の子にすごぶるモテた。それまで何かといえばくっついていた有喜菜と直輝がやっと離れてくれたので、紗英子はここぞとばかりに猛アタックしたのだ。
自分のどこに、そこまでの無謀さと勇気があったのかと我ながら感心するほど積極的になれた。平凡な自分は直輝とは釣り合わない。元から実ることなどない恋だと諦めていたのに、どういうわけか、直輝は紗英子の告白を受け容れて二人は付き合い始めた。有喜菜にはもちろん、事後報告で済ませた。
「それじゃあ、折角教えて貰ったんだし、時計にするわ。ありがとう。私の知らないことを教えてくれて」
最後には可能な限りの皮肉を込めておいた。
「いいえ、どういたしまして」
曖昧な笑顔を浮かべる有喜菜の顔が一瞬、複雑そうに歪んだことに、迂闊にも紗英子は気づかなかった。