この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night
第8章 花火
あの時、ベッドの上で体を起こしていた志穂の姿は、あまりに頼りなげだった。
小柄すぎる体や、骨の形が浮き彫りになりそうなほど痩せた手足、か細い声、儚げに微笑を浮かべるその顔さえも。
全てが脆い。
ほんの少し寄りかかっただけで、折れてしまいそうなほど。
晃は宵の、誰にも弱みを見せたがらない頑なな態度を思い出した。
あれはきっと、志穂と暮らしていた時の癖だ。
「痛いとか、辛いとか、しんどいとか、ずっと言えずに暮らしてきたのか、君は。あの人の負担にならないように、ずっと自分の気持ちを抑えてきたんだな」
顔は伏せたまま。
だが、握りしめた宵の手は小刻みに震えていて、自分の出した結論はやはり当たっているのだと悟った。
「だけど、そんなの辛くないか? 胸の奥が苦しくならないか?」
行き場のない、押し込めたままの感情は、一体いつ解放されるのだろう?
「宵!」
とっさに、名前を呼ぶ。
はっとした宵が顔を上げる前に、晃は宵の腕を引き寄せ細い体を抱きしめていた。