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Memory of Night
第9章 予感

 いや、もう広まっているのかもしれない。
 先ほど質問してきた女子が明と一緒に祭に行った子かもしれないし、どちらにしろ教師がいない野放し状態の教室で、根も葉もない噂はあっという間に広ってしまうだろう。

「諦めなよ。祭の日からもう二週間も経ってんだよ? とっくに広まってるよ」
「それもそうだよな……」

 そこをつかれると、今さら悩むのがばからしくなってくる。

「あんたは有名人だからね、学校じゃ。すぐ話のネタにされるんだよ」

 コーヒーを口にしながら明は言う。
 実際に、明の周りにも宵のファンは多い。
 ゆかた姿の宵を見つけた時は、写メ撮ろうだの尾行しようだの大騒ぎになった。
 その上隣にいたのが大西晃だったのだから、話題に上るには十分すぎるネタだ。
 明も、なぜあんな格好と組み合わせで姫橋祭にいたのか気にはなったが。

(……ものすごく言いたくなさそう)

 プリントなどそっちのけで、疲れきった顔で頭を抱えている宵の様子に、さすがにこれ以上聞くのも酷かな、と思う。
 だが、そんな思いをよそにしばらく無言で何かを考えていた宵は口を開いた。
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