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Memory of Night
第11章 罠
男の舌が胸元を滑っていく感触を、ぼんやりと感じる。興奮した荒い息づかいも。
宵が運び込まれたのは、狭い路地裏をさらに奥に進んだ場所にある建物と建物の間の小さなスペース。そこは不良たちのたまり場だった。
確かにこんな場所、誰も通らないだろう。裏通りはただでさえ入り組んでいて、地元の人くらいしか通らないのに。
宵は壁にもたせかけられて座らされ、小柄な男に目の前を塞がれた。
「あんた、肌綺麗だねぇ」
ワイシャツのボタンを全て外され、手や舌でしばらく肌の感触を楽しんでいた男は、ふと顔を上げて言った。
黒い瞳に金に近い茶髪。猿みたいな顔をしていた。小柄な容姿に似合う、年齢よりもわずかに高めの声で、くつくつと笑っている。
「初めてあんたを見た時から、ずっと触ってみたかったんだよ」
瞳を細め、なぶるように宵を見つめる。
小柄な男から漂う香水の匂いが宵の鼻をついた。強い臭気がひどく不快だ。
いやらしく笑う男の顔を、一発殴ってやりたかった。
だが、頭ではそう思うのに、右腕は全く動かない。