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Memory of Night
第12章 吐露
……そんな許可をもらわないと、泣くこともできないなんて。
宵はほんのわずかに顔を上げ、晃の腕を掴んだ。
そうしたらもう駄目だった。
今まで意地だけでせき止めていた感情は留まることを知らず、次から次へと溢れ出す。涙が宵の頬を濡らし、塩分を含んだその水に唇の傷がかすかに痛んだ。
そんなことですら、宵をどうしようもなくさせた。
たくさん声をあげて泣いた。こんなふうに泣くのは、本当に何年ぶりだろう。
晃はしゃがんでいるだけだった体を完全に床につけ、怪我をしていない右腕で、しっかりと宵の体を抱きしめる。
「片腕でごめんね?」
宵は首を振った。
片腕だけで十分だった。片腕だけで宵の細い体は十分晃の腕の中に収まってしまう。
宵は晃の胸にしがみつき、顔をうずめて泣き続けた。
ふいに顔をあげ、晃の包帯に触れる。
「でも……やなんだよ。……おまえが、怪我とかすんの……やだ」
嗚咽混じりのひどく聞き取りづらい声でそれだけ言うのが、宵には精一杯だった。
「ありがとう」
暖かい日が差し込む病室で。晃は微笑み、宵が泣き止むまでずっと、その背をさすり続けた。