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Memory of Night
第13章 吉報

「…………誰と?」

 妙な沈黙が応接室を支配する中で、さらに間を置いて、宵が問いかける。
 いや、本当は誰とかなんて聞かなくても察しはついていた。 
 結婚の報告を自分にする時点で、思い当たる相手は一人だけ。
 弘行は慌ててその名前を告げた。

「し、志穂さんとだが……」
「……まさか、そこまで話が進んでるとは思わなかった」

 予想を一切裏切らない弘行の返答に、呆れたように瞳を細めて宵が言う。
 志穂と弘行が親密な関係になりつつあることは気付いていた。

 入院したての頃まで志穂を大河さん、と名字で呼んでいたのに、いつの間にか名前で呼ぶようになっていたから。
 ただ、それがあまりに自然すぎて、最初のうちはわからなかったのだけれど。

「そっか」

 独り言のようにつぶやいて、ふいに宵が立ち上がる。

「いーよ。先生が父さんになるんなら大歓迎」

 宵の言葉に、弘行はほっと肩の力を抜く。
 宵もそれに応えるように笑顔を見せ、少し照れたように瞳を伏せた。
 誰かの前でこんなふうに呼ぶのは一体何年ぶりだろう、と思い返しながら、付け加えるようなニュアンスで言葉を紡ぐ。

「――志穂(かあ)さんのこと……大事にしてやって」
「え?」
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