この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night
第3章 秘密
「また来るって」
「今度はプリンおみやげに買ってきてよ?」
「わかったよ。カロリー一番高けーヤツ買ってきてやるよ」
軽い嫌味と共に病室を出ようとする宵に、志穂が付け加えるように声をかける。
「無茶はしないでね?」
宵が振り返る。
無茶というのは、宵が集めている金に対しての言葉だろう。
「……志穂さんも体、大事にしろよ?」
宵は頷いて、どこか遠慮がちなニュアンスでそれだけ返した。
そうしてそのまま部屋を出ていってしまう。
(――志穂さん?)
宵の言葉に、晃は違和感を覚えていた。
どうして母親なのに、名前で呼ぶのだろう。
さっきほほえましく感じた親子の距離が、なんだか遠くなったように思えてふに落ちない。
(別に俺には関係ないけど)
宵が志穂のことをどう呼ぶかなんて、赤の他人の晃には全く関係ないことだ。
それでもなぜか気になった。
宵の志穂に対する態度が、どこかよそよそしく思えたから。
「母さん。俺、宵と帰る」
「でも彼行っちゃったわよ?」
「うん、追いかける。ごめん、また今度見学させて?」
晃は慌ただしく部屋を出た。そうして早足に、宵の後を追った。