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Memory of Night
第5章 玩具
「そんな顔するなよ。志穂さんの為……なんだろ?」
また、あの名前を出す。宵の瞳が微かに歪むのが見えたが、もう罪悪感は感じなかった。
それどころか、もっと宵を追い詰めてやりたいという狂暴な思いにかられていた。
「もっと奥まで」
さらにねじこむと、宵が苦しげにうめく。肩を激しく上下させ、晃の服にしがみついていた手に力がこもった。
「苦しいの? でもきっと志穂さんはもっと苦しい目にあってるよ」
宵はわずかに顔を上げて晃を見る。
涙でうるんだ瞳。生理的な現象なのだとわかっても、綺麗だと思った。
もっと見たくて、さらに言葉を続ける。
「宵を育てるために苦労してきたんだろ? 随分無理してきたんじゃない? それが祟って今では入院。ベッドの中からずっと出られずにいる。ずっと……報われない。――宵のせいだろ? 宵がいたから、その人は病気になっちゃったんだろ?」
晃の口元が、微笑をたたえる。
「こういうことさせるのは、君にはいい罰じゃない?」