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Memory of Night
第5章 玩具
じゃあね、とだけ言い残し、晃は部屋から出ていった。
残された宵は、渡された缶をぼんやりと見つめていた。
晃との関係は、あっけないくらい簡単に終わってしまった。もう妙なことに付き合わされることもない。
ほっとしてもいいはずなのに、どこかしっくりこないのはなぜだろう。
心の中がもやもやしている。
「……っ」
宵はその気持ちを振り払うように、小さく首を振った。
金なんて、また前みたいに適当に相手を探して稼げばいい。だいたい、決まった相手とやり続ける方が宵にとってはめずらしいことなのだ。
こんな気分になるのはおかしい。
宵は吹っきるように缶を口元へ運ぼうとして、ふと思いとどめた。
(晃と……間接キス)
頭の中に浮かんだ単語に、思わず苦笑する。
高校生にもなって、今さら間接キスなんて気にするのは変だ。ガキじゃあるまいし。
構わず飲み干し、カラになった缶をぐしゃりと潰す。
その時、バタバタと慌ただしい足音が聴こえ、勢いよくドアが開いた。
カーテンの向こう、現れたのは担任の倉木(くらぎ)だった。