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第3章 変化
19時の約束のちょうど10分前に駅に着くと、携帯が鳴る。

『友香ー?今、着いた』
「私も今駅に着いたよ。どこにいるの?」
『2番の改札のとこ』

久しぶりに聞く声は、昔と変わらない。

改札に着くと、スーツ姿の圭太がいる。
34歳だと言うのに、まるで新入社員かのようにピシッとネクタイを締め、同い年だと言うのにその姿には溌剌とした若さが溢れている。

綾瀬が大人の男だとすると、圭太はまだまだ男の子。
二年ぶりに会っても、そのイメージは払拭できない。

「え?飲まないの?」
「うん、今、肉体改造中なの」

気兼ねする必要もない二人は、赤提灯が灯る居酒屋で向かい合う。

「何それ?でもなんか若返ったよね」
「二年ぶりなのに?」
「うん、二年ぶりなのに。だってあの頃の友香、やつれてたもん」

確かに支店長になり、周りのプレッシャーと嫉妬に押し潰されていた頃かも。

「今は、いいね。見違えるくらいだよ」

そう言いながら、店員にどんどんと注文する圭太も、若い。
二人と言うことを忘れているのではないだろうか。
目に付いたものをどんどんと頼み出す。

「圭太、そんなに頼んでも、私食べられないよ?」
「あー、そっか、ごめんごめん。とりあえずそれで」

まだ季節には少し早いおでんを食べながら、圭太はビールをグイグイと飲み干す。
一口で半分以上減っている。

「よく飲むね」
「んー?酒飲まんとやってられん」
「あは、私も仕事してる時は同じこと言ってた」

そうこうしているうちに、テーブルは料理で埋め尽くされた。

「これ、誰が食べるの?」

流石に頼みすぎたことを後悔しているのか、苦笑いを浮かべる。

「で?友香みたいな仕事人間が一ヶ月も休みなんて、何かあったの?」
「何もないよ。ただ有給溜めすぎって言われたから休んでるだけ。一ヶ月も休みあるんだから、このいらない脂肪を燃焼させるにはいい機会かと思って断酒してるの。仕事してたらなかなかできないし」
「なぁんだ、良かった。男でもできて結婚するって言われたらどうしようかと思ってた」

さらりと、すごいことを言われた気がする。
深く追求しないように、話の流れを変えようと友香は逆に圭太を攻める。

「で、今回はなんで振られたの?」
「俺が振られる前提?」
「え、違うの?」
「違わないけどさー」

拗ねたように口を尖らせる姿は、やはり男の子。
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