この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真選組 鮮紅血風録
第1章 男だらけの中に女の子1人の事を紅一点って言うじゃない?
――ここは、大江戸。
人間、天人、えいりあんが闊歩する街。
完全な武家制度はもはや残像かハリボテ程度でしかなく、将軍という名の存在はお飾りと化していた。
かつての攘夷戦争により敗れた人間は浪士となり、各地でテロ活動を行うようになった。
天人の支配。攘夷志士達の反乱。えいりあんの来襲。
そんな物騒な江戸において、治安と平和を死守する集団。
その名も、武装警察 真選組。
… … … … …
穏やかな晴天に包まれた昼下がり。
暖かい日差しが照らす屋敷の廊下を、とんでもなくデカい足音を立てて歩き回る人物があった。
苛立たしげな表情でズカズカと大股で歩き回る人物は、時折立ち止まっては部屋の中を覗いたり、中庭を見回したりしている。
どうやら誰かを探しているらしい。
そして、目当ての人物が見つからないと分かると、更に苛ついた表情を浮かべて、足音も荒く歩き始めるのだった。
【…どうしたんスかー? 補佐ー?】
中庭の掃除をしていた隊士達が、その人物の様子を察して声を掛ける。
声を掛けられた人物は、ピタリと立ち止まった。
?【…………んだよ……】
小さな声で、呟くように、隊士達のほうを見向きもせずに言った。
【へっ? なんスかー?】
聞き取れなかった隊士が、そう声を掛けた直後。
?【いねーんだよ! アイツが! どこにも!】
くるりと振り返った人物は、あからさまに不機嫌そうな声でそう怒鳴った。
短く切られたアッシュカラーの髪。色白の肌色。
隊服の上から見ても分かる程に、華奢で細身の体躯。
眉間のシワと額の青筋さえ無ければ、釣り目であるもののなかなかの美形である。
【あー、俺らんとこの隊長を探してるんスか? ここにゃ居ませんよー?】
?【はぁ!? 隊長が自分の隊士ほっぽって何処行きやがった!?】
【いやー、俺らにもさっぱり……また何処かで居眠りじゃねースか?】
?【アイツ! またサボりか! 叩き起こして引き摺って来ねーと!】
そう言ってまたズカズカと歩き出す。
そんな様子に隊士達は可笑しそうにケラケラと笑った。
【あっはっは、補佐は本当に沖田隊長の事好きっスね】
【ほんとほんと。お熱いこって】
隊士達のからかいの言葉に、何処からかプチッという音が聞こえた。
?【だぁれぇがぁじゃああああああ!!!!】
再び振り返ったその表情は、まさに鬼。