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ガラスの靴がはけなくても
第1章 眠れぬ夜
車の中から手招きする姿が見え、それにひとつお辞儀を返して車内へ乗り込んだ。
「お願いします」
「はい、どうぞ」
なんだか緊張してしまう。
約三年間部長と同じ空間で仕事をしていたものも、二人になることなんて滅多になかった。
ましてや狭い車内に二人きりだなんて。
……そう。今私すごく気まずい。
何か話さないと。何か……
「あっ!部長のお車は?」
車通勤だと言っていたはずなのに、何故だか社用車で。
「置いてきた」
「え?」
「ほら、なんかやらしーだろ?自分の車なら"ドコ"にでも入れる」
「……?」
ハンドルを握りながらニヤリと嫌な視線を流す部長。
「送り狼にならない為の社用車だってこと」
「~~っ!それってセクハラです!」
…………しまった。
完全に墓穴掘った。
「大体"送り狼"って言葉はこう言う時に使いません。私は酔ってませんし。今は仕事の帰りであって合コン等の帰りではありません」
今の言葉が部長の冗談だと分かっていても、訳の分からないことを口走る私は完全に緊張してる。