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ガラスの靴がはけなくても
第5章 赤のしるし
だめだめ!
オフィスでこんな……!!


「誰か来たらどうす…――あぁっ!」


焦る私を他所に耳に噛みついたかと思えば


「この時間ならよっぽど誰も来ねぇ。藤野が大声でも出さなきゃ、な」


そんなことを平気で言ってしまう部長。

私達が使っているものより大きくしっかりした部長のデスクチェアーでも二人分の重さを支えるには頼りない。
ギシギシとした音がオフィス内に響く。

いつもは仕事をしている場所なのに。そんな場所で今のこの状況はどこか現実味がない。
それでも確かに感じる部長の体温に頭がくらくらする。


「耳。好きだろ?」


「やぁぁっ、だ、め…っ!ぶちょ…っ」


「逆に煽ってるってその声。わざと?」


「ちが、うっ!やだやだぁ…ああっ」


ゆっくりと縁をなぞって、唇で挟んで。
わざと音を立てて吸い付く。

だめなのに。
熱くなってく身体をどうしていいのか分からない。


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