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ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度


「行きません」


「ちょっと何その即答」


パソコンを一旦落として、鞄を取り出す。

こんな話に付き合ってたら私の貴重なお昼休みが終わってしまう。


「いいじゃない。社会人になってから三年、ちっともそういうのに参加してなかったんだし」


「そうですけど…」


「25だからって油断しないことね」


ビシッと私に向けて指を指す香織さんの気迫に、思わず後退り。


「あっという間に一年。また一年。気付けば30超えても独り身なんてザラよ!?あ~恐ろしい!!」


そう言いながら自分の身を抱きしめだす貴女の方がよっぽど恐ろしいなんて、口が裂けても言えやしない。

だけど、


「とにかく失恋の余韻に浸る暇があるなら次の恋よ。さっさと忘れなさい」


何だかんだ私を元気付けようとしてくれてるのが分かる。
慰めの言葉より、いつも通り接してふざけてくれることの方が嬉しい。
実際かなりの痛手を負ってるわけで、話を掘り返してへこむよりはそう接してくれた方がずっとずっと気が楽だ。

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