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ガラスの靴がはけなくても
第4章 揺れる
そっと離される体。
頭の上に一つの溜め息が落ちた。
いつもの呆れたようなものではなくて深呼吸をしたように聞こえて。
「失恋した藤野につけ込んだ俺は卑怯だな。ただ俺の前で泣く藤野を見て歯止めが効かなくなった」
頭上から聞こえる声に耳を塞ぎたくなった。
これ以上は聞いてはいけないと思う自分と、聞きたいと思う自分。
落ち着いた低い声は二人しかいない静かなこの部屋によく響く。
今までに聞いたことない部長の声色。いつもの強気で俺様な部長じゃない。真剣な言葉は私に真っ直ぐに響く。
「俺はずっと前から藤野を見てた。だから勿論男がいたことも知ってた。だけど"あの日"、その男が藤野にあんな顔させたって思ったらもう無理だった」
あぁ。どうしよう。
「俺だったらそんな顔させないのにって思った」
"まだわかんねぇ?"その問いに首を横に振った。
「どうしたらお前ん中俺でいっぱいに出来る?」