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面影
第5章 茉莉花
ー 今から、15年前。
『棗。紹介するよ。
井上莉花(イノウエ リカ)さんだ。』
『始めまして、棗くん。
井上莉花です。』
『父さん、莉花さんと結婚しようと
思ってるんだ。だから莉花さんがー』
『…僕のお母さんなの?』
『…そうだよ。莉花さんは、
棗の”お母さん”だよ。』
ふんわりと笑うその人を見て、
あの時ガキのくせして
名前の通りの花みたいな人
って思った。
父さんが惹かれるのも理解できたし
その人を拒む理由なんて
ひとつもなかった。
産んでくれた母親は、
俺を産んですぐ姿をくらました。
父さんは、男手一つで
俺を必死に育ててくれた。
感謝してもしきれないくらいだ。
だから、父さんには誰よりも
幸せになってほしかった。
それに、俺も嬉しかったんだ。
父さんしかいなかった、”家族”が
増えることが。
『…お、母さん…。』
『フフッ。なあに?棗?』
『…///!』
『これからは、家族だから
ずっと一緒よ。棗。』
ズットイッショ。
家族ダカラ。
ズット、
イッショ。
あの時、俺は幸せの絶頂にいたんだ。