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面影
第5章 茉莉花
数日後。
初めて茉莉花に会った。
当時、茉莉花は高一で
華奢な身体に大きな瞳と長い睫毛が
印象的な美少女という、形容詞が
ピッタリだった。
腰まで伸びた、長くてサラサラの
茶色がかった髪の毛や
触れると消えてしまいそうな
儚い雰囲気は、茉莉花を
より大人っぽく魅せた。
『茉莉花〜勉強教えて〜』
『もう!仕方ないな〜』
茉莉花は、面倒見がよくて
見た目だけじゃなく、頭も賢くて
当時はよく宿題を見てもらっていた。
『棗、私に勉強教わらなくても
答え分かってるでしょ。』
『そんなことないよ〜
あぁ姉貴には感謝だな〜♪笑』
茉莉花の言うとおり、
大学の教授をやっている
父さんの血を引いているせいか
勉強はできる方だったし、
分らない問題なんてたま〜にあるか
ないかくらいだった。
『ねぇ、茉莉花。
もうすぐ僕、誕生日だよ。』
『7月28日だよね。
欲しいもの考えておいてね。』
『…うん。』
さっきまでこちらに向けられていた
視線は、また問題集に戻る。
長い睫毛が茉莉花の頬に影を作る。
その姿は、息を飲むほどに
儚く、美しかった。
俺の周りには、男も女も
いつも十分すぎるほど溢れてた。
皆が棗、棗と慕ってくれた。
学校で一番人気の女子だって
例外じゃない。
ちょっと優しくするだけで、
キレイな子、可愛い子なんて
簡単に沢山寄ってきた。
でも一人として、茉莉花のような
ヤツはいなかったんだ。
容姿、信頼、人気。
この3つが揃っていたおかげか、
欲しいと思ったモノは
なんでも大抵すぐ手に入った。
ーーー だから、茉莉花も、
欲しいと思ってしまった。
この花を自分だけのモノにしたいと。
ケースにでも入れて、自分だけの
秘密の場所に隠してしまいたいと。
ドロドロとした、独占欲しか
その時の俺にはなかったんだ。