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面影
第7章 時計
棗をベッドに横にして、
ベルトやらネクタイやらを
緩めて、布団をかけてあげる。
〝…俺には、もう麗だけ。〟
そう最後に言って、棗は
眠りについた。
棗が完全に寝たのを確認して、
棗の携帯を手に取る。
罪悪感がないわけじゃない。
でも他に手がないから。
イタチごっこもいいところだ。
手慣れた作業。
目的の名前を呼び出し、
着信受信拒否にする。
〝笹原莉花 消去しますか?〟
何度この作業をしたのだろう。
でも携帯を変える度、
いつの間にか当たり前のように
追加されている、この人物。
〝笹原莉花 消去しました。〟
私が消してることも知っているのに
棗は一度も咎めたりしない。
『ねぇ、棗はいつまで
続けるつもりなの?』
スースーと規則正しい寝息を
立てる綺麗な顔を撫でながら、
私も瞼をそっと閉じた。