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面影
第8章 動き出す
- 旭side -
一晩。俺は無い脳みそを
フル回転させて考えた。
棗さんも、早瀬さんも
結局は過ぎた過去を悲観し
嘆いているだけなんだ。
悲劇の主人公みたいなもの。
棗さんの義理の姉、茉莉花さん。
棗さんの実のお父さん。
どちらの死も、
受け入れられてない。
それは、事実を知らないから。
だから時計は止まったままで、
錆び付いた針は動くことすら
忘れてしまったんだ。
傷の舐め合いなんか糞食らえ、
だっつーの。
事実を知れば、まだ少し
前進できるはずなんだ。
まだ誰も来ていないオフィスで
自分のPCを立ち上げる。
” 20XX年 7月18日
○○市 親子 車 死亡事故”
キーワードを打ち込むと、
すぐにお目当てのページに
たどり着く。
ー 死亡したのは、笹原正樹さん(45)と、
その娘 笹原茉莉花さん(22)。
車は時速80kmオーバーで、
ガードレールを突き破り、
そのまま崖下に転落。二人は即死。
当時、天候もよく、事故現場は
見通しも良好であった。周辺に、
ブレーキ痕は見つからず、警察は…
『心中…なのか?うーん…』
一人で唸りながら、
とりあえずそのページを
プリントアウトし、ファイルに挟む。
『事故現場けっこう…近い!
ちょっと行ってみるか!
あ!LINELINE〜♪
はい、よしオッケー!』
旭 / 外回り
と、ホワイトボードにも
しっかり書いてオフィスを出る。