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真実アイロニー【完結】
第9章 一人の人間として。 

教師のクセに。
大人のクセに。
気の利いた言葉なんて出て来やしない。
小早川はずっと、彼を殺してしまったっていう自責の念から抜け出せずにいるんだ。
大丈夫とか、小早川が悪いわけじゃないとか、そんな軽い言葉。
どうしたら言えるのだろうか。
きっと、こんな言葉。
小早川は求めていない。
「……痛かったな」
小早川の体をそっと離すと、彼女の腕を取る。
自らの手で痛めつけた、その手首。
残った傷痕が、彼女の気持ち全てな気がした。
「……俺は離れないから」
それは本当に、俺の気持ちだった。
この話しを聞いて、誰もが小早川から離れてしまったのなら。
俺は、俺だけは側にいるから。
今までと同じ様に、小早川って声をかけるから。
「別に同情なんていらない」
バッと、掴む手を振りほどくと彼女は俯いたままそう冷たく吐き捨てた。
 

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