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呟きたい
第19章 夏企画~単発~

「祖母は嫌な気がして、急いで床を這っていき扉を開けたんです。真っ暗な中に。お香の臭いが立ち込めていたらしいです。誰かが焚いているのかと臭いの元に壁を伝いながら向かいました。何も見えない中を。森に囲まれ、鳥の声だけが断続的に聞こえたと。鐘の場所に辿りつきましたが、先に行ったはずの少女はいなく、辺りに人影はありませんでした。入れ違いになったんだろうと、祖母は急いで本殿に戻りました」
「全員死んでたとか言わないよね」
「映画じゃないんだから」
「全員、お経を唱え続けてたんです。ただ、数だけが違った」
「戻ってきた子と合わせて七人じゃないのー」
「いえ、五人になってたんです」
「そして誰もいなくなった、だな」
「紫苑古い」
「なにがだ」
「あれ。なんか怖くないですね。変だな」
「瑞希。この二人は荒らしが好きだから気にしないで」
「俺、下手でした?」
「面白かったけどね」
「もういです。ふっ」
「諦めないでよ」
「どうせ俺は話下手ですよ」
「あれー? 蝋燭消えてる。こわっ」
「もうむちゃくちゃだ……」
「失礼するぞ」
「篠田、珍しいね」
「暗いな。なにやってんだ」
「百物語……縮小版?」
「本当になにやってんだ、お前ら。八人集の三人が集まって」
「俺もいますよ」
「瑞希か。なにやってる。暇なのか」
「えー……なんで俺だけ」
「丁度いいから篠田も一つやってってよ」
「怪談? 断る」
「怖いの?」
「……類沢。あとで来てもらうぞ。一つだけだな」
「やったー! 篠田さんの怪談だぁ」
「俺帰っていいですか」
「途中退出は霊憑きだけど」
「もうー!」

