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呟きたい
第24章 姿勢①
「つまり原点は文字が美しく並んだ……ぎっしり詰まった小説だったはず」
「携帯小説のブームが来たからといって、元来の形式を見たことない読者は恐らくいないだろう」
「教科書という登竜門があるからね。私の原点はそこだね」
「過剰な空白、絵文字。確かに便利だし新しい技法と認める意見が多数だよね。簡単に意志疎通が図れるし、誤解を生まずに読み手に伝えられるんだから」
「けど進化かっていうとそうじゃない」
「選択肢の広がり? 笑わせる」
「文字の可能性を諦めて気分の高揚を表す数行を省く☆、笑い方の繊細な描写を辞典を開くことさえ考えない近道思考」
「メールは伝達速度が求められるからそれらがうってつけだった。詩みたいなメールなんてそこに価値を見いだされたりしない」
「けど作品は違う」
「作者の思いを記号化して氷山の一角に過ぎない文字数で流されてしまう。しかもそれを時代が生んだ利便性と解釈して」
「ほら。お局様の登場だ」
「頭が固いんだよ。自由で何が悪い。強制するなよ、携帯小説ってのはそういうもんなの。はいはい、聞きあきた切り札台詞はもういいよ。これ以上の議論に発展する余地さえないんだから」
「文字の地位はどんどん下がっている。前はそう話したけどちょっと違うかな」
「脳が死ぬまでに数パーセントしか活用されてないように、何万て感受性に富んだ語句が僅か一部しか使われないまま文字が死んでいく」
「言葉の番人を童話化したときから考えていたこと」
「相槌小説ね」
「そうそう。相槌小説。私はそう呼んでいる。最近増えすぎた読み手が頷くだけでページを捲っていく小説。あぁ、うん。そうね。はい次は?」
「その一文に書き手が一年費やした作品を知っているのか知らないのか」
「無知の知さえなく」
「いつになく過激かい」
「まだ堪えられたら次にを押して。これは呟き。貴女の人生に全く関与しない無責任な文なんだから」