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第26章 大切なこと＊

有史さんの言うこと聞かないと、あの人達に負けそうな気がする…。それは嫌。契約が終る迄は…。あの人達より劣っていると、そんな風に思われたくない…。

「起きたか…。」

頭を優しく撫でられて、有史さんが側に居る事に気が付いた。声も、頬を撫でる手も優しい。目も、いつもの有史さんの目に戻っている。

「辛かった？」

隣に座って、肩を抱き寄せて労るように優しい口調で問いかけてくる。

「辛くない。大丈夫。」

脳裏をちらつくあの人達に負けたくなくて。そんな強がりが口から飛び出した。

「そうか…。」

頭を撫でる大きな手が気持ちいい。寄り添ってくる身体があったかい。他の誰かとセックスしないで…。一番言いたい事をお腹の中に飲み込んだまま、有史さんの胸に顔を埋めた。

「はぁ〜っ。真子っ。」

この腕に、ぎゅっと抱き締めてもらうと安心するの…。時々ウザいけど、名前を呼ばれるとちょっぴり嬉しいの。

薄暗い部屋の窓外には、バスローブと同じ薄墨灰色の空が広がって、いつ止むか分からない雨がシトシトと降り注いでいた。