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私は犬
第30章 主導権*
悩んでいると、お昼ご飯を終えた春木さんが、応接室に顔を出した。ちょっと聞いてみようかな…。

「春木さん、……人とお食事をするのだけど、良かったらご一緒してくださらない?」

そう告げると、春木さんはキョトンとした顔をしながらも快諾してくれた。

「いつですか?」

「週末。だから金曜日になると思う。来週辺り…どう?」

「金曜日はすみません。合気道の稽古が入ってるので無理です。」

はぁぁ〜。詰んだ。

「そう…。じゃあ仕方ないわ。また改めてお誘いしてもいい?」

「はい。是非そうしてください。火、金以外でしたら大丈夫です。」

技を維持するには、たゆまぬ努力が欠かせないのね…。春木さん、凄い。

午後の始業開始に間に合うように、営業部に戻った。戻る途中、鮎川さんらしき人を見かける。あのストレートヘアに薄黄色のブラウスは、絶対に鮎川さん。例の食事問題を、早く片付けてしまおう…。

「鮎川さん。ご相談があるのですが。少しお時間頂けませんか?」

もう、この問題が片付いてくれるなら、相手は誰でも構わない…。

「何?早くして。」

誰でも構わないけど…イライラしてる鮎川さん、かなり恐ろしい。
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