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私は犬
第32章 我慢の限界*
「ちょっと!あの肉何?シュラスコ?アッチの屋台はチーズフォンデュ?やだっ!焼きモロコシまであるっ!」

剛ちゃんまでビール片手に騒ぎだした。うん。だいたい合ってるけど、それ、シュラスコじゃなくて、ドネルケバブ。チーズフォンデュじゃなくて馬鈴薯で食べるラクレット。

さっきのバケットあった屋台がチーズフォンデュ。バケットの穴の中に溶けたチーズ注いでくれるの。それと、焼きモロコシは醤油じゃなくてバター味。だから気を付けて。

「キャーっ。あれなによっ!」

剛ちゃんの頭の中は、音楽フェスティバルじゃなくて、屋台料理フェスティバル…。端から食べてる。私も綿菓子の屋台を見つけて1つ買った。

伊、仏、独、西、トルコ…。ざっと見ただけで5ヵ国の屋台があった。スイス料理の方が少ない…。町のレストランもそんな感じ。インド料理屋まである。観光に来たら気を付けないと、スイス料理を一口も食べないまま旅行が終わっちゃう。

湖畔の岩壁の上に、ライトアップされた幻想的なシヨン城が見えてきた。ライヴ会場はあのお城。19時開演だから、そろそろ始まるわ。

「キャーっ!お城っ!ステキっ!」

ねぇ…お城へ入る前に、その両手のお料理ちゃんと食べ終えてね?
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