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私は犬
第32章 我慢の限界*
春木さんに付き添われて、クリニックに着いた。受付を済ませて荷物をポーターさんに預ける。

「私はここで失礼いたします。」

「おば様にお会いしないの?」

「仕事がございますので…。」

春木さんは、そう言って帰ってしまったけれど。言葉を濁してた気がしなくもない。病室に通されて、スタッフの方に説明をうけ、おば様の病室を訪ねると、聞いた通り掛け布団の中に閉じ籠っていた。

「おば様、ご機嫌いかが?」

「真子ちゃんっ!来てくれたのねっ…。」

とてもお元気そうだわ。拗ねてるだけみたい。

「孝徳ったら酷いのよっ。騙してこんな所まで連れてきて、私のパスポート持って、帰っちゃったの…。」

おば様は涙目でそう仰るけど。日本の病院だと、勝手に帰って来ちゃうから仕方ないと思うの…。孝徳さんも考えたわね。

「私もここで検査受けるの。素敵な場所で良かったわ。」

「病院なんて大嫌いなのに…。血、採られたのよっ!こーんな注射器でっ!」

「おば様…。そんな大きな注射器が必要なのは、自由の女神くらいよ…。」

それにしても、他のお付きの方は、どちらへ行かれたのかしら?
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