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私は犬
第33章 さよなら
翌日、マンションに辿り着いたのは夕方で、土曜日だというのに部屋には誰も居なくって、安心なのか諦めなのか分からない、複雑な感情に見舞われた。でも、これで当たり前なのかもしれない…。

今頃、誰とどこで何をしているのだろう…。私の居ない間、どこで眠っていたのだろう…。バカみたいに考えてみても、答えなんか出ない。

これから何をしよう。バスタブの中でお湯に浸かりながら考える。寝てしまえれば楽なのに、機内で寝て起きたばかりで、また寝るなんて出来そうにない…。

お風呂から出てベッドに倒れて、枕に顔を埋めると、微かに有史さんの匂いがするような気がして、お腹の奥が熱くなった。

連絡してみようか…。ただいまとメールする位なら、誰かと居ても邪魔にならないかもしれない。でも…無視されたら?何の反応も返してくれなかったら…?そう考えると、送らない方がマシに思えた。

ああ。もう頭がパンクしちゃうっ。リビングのソファーで、スマホとにらめっこしているとカチリと扉の開く音が聞こえた。

この部屋に黙って入ってくる人なんて、1人しかいない。そう思いながら扉へ顔を向けると、焦がれ続けた理想の指の持ち主が立っていた。

「お帰りなさい。」
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