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私は犬
第33章 さよなら
家族だったの?私達が?だから叱られても、私達の為に重たい荷物を運んでくれていたの?だとしたら……。あぁ…生きている時にもっと大切に出来た筈なのに…。

ロルフの汚れてゴワゴワになった毛に触りたい。あの懐かしい匂いをもう一度嗅ぎたい…。一度くらい、ちゃんと褒めてあげれば良かった。


いつもいつも。手が届かなくなってから気付いて後悔してる。私は生前の、ロルフや居なくなった人達の何を見ていたのだろう…。

「どうした?」

「大丈夫。どうもしない…。」

契約が満了したら居なくなっちゃう、有史さんには関係ない。

「お前さ…。全然大丈夫じゃねぇだろ。感情はきちんと表に出せ…。」

何が?いきなりどうしたの?

「人はさ、喜怒哀楽の全てがバランス良く必要なんだ。ちゃんと、怒ったり哀しんだりしねぇと、喜んだり楽しんだり、そういう事が出来なくなんだよ…。」

「ちゃんと悲しめよ。あの婆さん、お前の大切な人だったんだろ?」

有史さんは、私が悲しんでいないとでも思っているの?私、そういう風に見えているの?

「ちゃんと悲しんでるわよ。私の事をろくに知りもしない癖に、知った風な口を利かないで。」

そうよ。何も知らない癖に、ちゃんと悲しめなんて、勝手な事ばかり言わないでっ。

「……お前さ、ちゃんと泣けよ。大切な人が死んだのに、涙、流さないでどうすんだよ…。」
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