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私は犬
第12章 歓迎会
時間を見計らって第1営業部へ向かう。前席の笹木さんは既に着席していた。
「おはようございます。」と声をかけると、「おはようございます。」と下を向きながらも返してくれた。
こんな些細な事にも、ちょっと安心してしまうのは、去年の事をを引き摺っている証拠かもしれないわ。
あれから、総務課では大規模な人事移動があったらしい。詳細は知らないけれど、渡辺さんは副社長派の関連企業の社長のお嬢さんだったと聞かされた。
総務課というのは、無くてはならない職場ではあるものの、他部署に比べると人の出入りが少なくて、良くも悪くも慣習が滞るのだと、孝徳さんが言っていたから、何かが滞っていたのかもしれない。
孝徳さんに、「ごめんね。」と謝られたけれど、何の「ごめんね」だったのか。いまひとつ理解出来ない。
もう、済んだ事だから忘れなきゃ。
「九宝さん。」と呼ばれて顔をあげると、鮎川さんがいた。
「何でしょう?」
やっぱり、今でも名前を呼ばれるとドキドキする。
「今の英訳の資料、仏訳にも出来ますか?」
「はい。」
「主任が早急に必要としていますので、優先して下さい。仕上がったら私の所までお願いします。」
「はい。急ぎます。」
「おはようございます。」と声をかけると、「おはようございます。」と下を向きながらも返してくれた。
こんな些細な事にも、ちょっと安心してしまうのは、去年の事をを引き摺っている証拠かもしれないわ。
あれから、総務課では大規模な人事移動があったらしい。詳細は知らないけれど、渡辺さんは副社長派の関連企業の社長のお嬢さんだったと聞かされた。
総務課というのは、無くてはならない職場ではあるものの、他部署に比べると人の出入りが少なくて、良くも悪くも慣習が滞るのだと、孝徳さんが言っていたから、何かが滞っていたのかもしれない。
孝徳さんに、「ごめんね。」と謝られたけれど、何の「ごめんね」だったのか。いまひとつ理解出来ない。
もう、済んだ事だから忘れなきゃ。
「九宝さん。」と呼ばれて顔をあげると、鮎川さんがいた。
「何でしょう?」
やっぱり、今でも名前を呼ばれるとドキドキする。
「今の英訳の資料、仏訳にも出来ますか?」
「はい。」
「主任が早急に必要としていますので、優先して下さい。仕上がったら私の所までお願いします。」
「はい。急ぎます。」