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陽炎ーカゲロウー
第1章 邂逅
太い眉

切れ長の目

整った鼻梁と引き締まった口唇。

日焼けした、浅黒い肌にそれらはよく映えて…


傷さえ除けばなかなかの美丈夫であった。


「俺は市九郎だ。お前は?」

男の問いに、女は、

「赤猫…」

と答えた。


元の名など、とうに忘れた。
誰かが彼女の顔を見て、赤猫だと言い出した。

そして彼女は赤猫になった。


ところが。

市九郎はその答えに、奇妙な顔をする。

そして。突然噴き出し、腹を抱えて笑いだす。

「赤猫か!こりゃとんだ大間抜けがいたもんだ!
お前、面白ぇなぁ。ハッハッハッハッ」


「お前、ヤサは何処だ。仲間は居んのか?」

赤猫はふるふると、頭をふる。

市九郎はひとしきり笑い、

「一匹モンか。なら、ここにいりゃどうだ?」

赤猫の背に手を差し入れてゆっくりと抱き起こしながら。


「赤猫。 俺のオンナになれ。
ーーー俺が、お前を、護ってやる。」




※赤猫……放火犯の俗称
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