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陽炎ーカゲロウー
第12章 終
取り締まりにより、手下が数名捕らえられたものの、頭領の名が市九郎である事は知れても、その者らは市九郎の死を知らず、その事実が公になることはなかった。

その為、陽炎は未だ存続しており、次の仕事に備えて息を潜めている、と皆が信じていた。

手下の者が新たに捕らえられても、手口の稚拙さから陽炎を語っているだけ、と言われ。

形はあれど実体はなし、まさに陽炎、と持て囃される。

巷説に飾られた市九郎とその一味は、雲を突くような大男と、その脇を固めるのは世にも美しい女忍びが二人、であった。


誰も実体を知らぬ陽炎は、後の世まで語り草となる。

その陰で、各々が新しい道を歩み始めた事を知る者も居ない。

陽炎は、真の幻として、この世から消える。



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