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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第7章 時流れの向こうには【詩】
でも、そのときは、その流れが行き着く先ももうかなり見えていることだろう。つまり、老いや人生の終わりを見つめる時期が近付いているということでもある。
 考えてみれば、私の場合は、時の流れを意識しない時期の方が良いのかもしれない。まだ自分の側を流れる時の流れがどこに向かうのか、全然予測もつかなかった十六歳の私はよく、この季節になると、勉強部屋の窓を開けて花梨の花を眺めていた。その二年後、父が不慮の事故で若くして亡くなり、私の運命は大きく変わることになる。そのときはまだ、二年先のことなんて想像もつかなった。
 時の流れは誰の上にも流れている。嫌なことを忘れさせてくれるという意味では時は優しく、どんなに美しい人でも、時がその上を通過すれば、老いのしるしがくっきりと刻まれる。そういう意味では、とても残酷だ。自分の側を流れている時の流れの向こうに何が待ち受けているのか、むしろ判らない方が良いのだろう。父がもし自分の二年後の悲劇を知っていたら、もう生きる気力もなくなってしまったかもしれない。先が判らないからこそ、人は不安でもあるけれど、また希望をいだいて生きてゆける。そう考えてゆけば、今という一瞬を精一杯輝かせて生きていくことが何より大切なのだだ。
 今、我が家では花梨だけでなく、シャガの花も真っ盛りだ。今の私はむしろ、自然界―例えば花の開花だとか、我が子の成長に時の流れを感じる。抽象的ではなく具体的に時の流れを意識するようになったのか。どちらが良いとも言い切れないが、季節のうつろいで時を感じるのも良いものなのだと思うようになった。
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