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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第9章 さようならも言わずに
さようならも言わずに

ある日の夕方 父は突然 物言わぬ人となった
その朝  父と最後に交わした会話を私はけして忘れない
〝行ってきます〟
〝気をつけてな〟
高校に行く私の背を父は恐らくずっと見ていたに違いない
何故 あの時 父ともっと言葉を交わしておかなかったのか
あれから三十年近くを経た今でも悔やまれる
孝行したいときに親はなし
昔からの諺にもあるが 
なるほど よく言ったものだと思う
事故に遭った日から数えて17日め
父はついに帰らぬ人となってしまった
さようならのひと言さえ交わせなかった

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