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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第130章 桜幻想(エッセイ)
 昼間の清楚な桜が年端のゆかぬ少女なら、妖艶な夜桜は臈長けた妙齢の女性を彷彿とさせるだろう。なるほど、妖しささえ感じさせる夜桜の下でなら、どんな摩訶不思議なことが起きても納得できるような危うさを秘めている。若かった私は、至極真面目に考えたものだった。
 今でも桜といえば、真っ先に思い浮かべるのが寮部屋の窓際から見た桜である。どんな観光地の見事な桜よりも、あの日見た満開の桜が一番心に残っているように思える。 
 
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