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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第145章 桜よ、永遠に(エッセイ)
春、桜の時期になれば医院の庭の一隅に植わった桜が満開となり、塀越しに伸びた桜の枝にもたわわに薄紅色の花がついた。風が吹く度に、ひらひらと桜の花びらが風に乗って漂い流れる。道路には桜貝のような可憐な花片がそれこそ隙間なくびっしりと散り敷いて、なかなか風情のある光景となっていた。自分が学生の頃にはあまり桜には関心もなく、ただ学校への行き帰りの道として忙しなく通り過ぎていた場所にすぎなかった。
ところが、歳を経て自分が母親となり我が子が小学生となる頃には、入学式当日、満開の桜の下を子どもと通る度、子どもの成長と共に今を盛りと咲き誇る桜花の美しい風景が記憶に強く焼き付けられた。振り返れば、アルバムの写真には第一子から第四子までどの子の入学式の風景にも、この桜の枝の下―道路でランドセルを背負った子どもの姿が収まっている。不思議なもので、自分の子ども時代にはろくに憶えていないのに、我が子の入学式とその場所の桜は切っても切り離せない想い出となっているのだ。
ところが、歳を経て自分が母親となり我が子が小学生となる頃には、入学式当日、満開の桜の下を子どもと通る度、子どもの成長と共に今を盛りと咲き誇る桜花の美しい風景が記憶に強く焼き付けられた。振り返れば、アルバムの写真には第一子から第四子までどの子の入学式の風景にも、この桜の枝の下―道路でランドセルを背負った子どもの姿が収まっている。不思議なもので、自分の子ども時代にはろくに憶えていないのに、我が子の入学式とその場所の桜は切っても切り離せない想い出となっているのだ。